人文実装部 / テーマ25

Chapter 25 · Saint-Exupéry — Love & Responsibility · 全4回

サン=テグジュペリ — 愛と責任

番組で初めての“作家縛り”シリーズ。フランスの作家・飛行士サン=テグジュペリの『夜間飛行』『人間の土地』『星の王子さま』を全4話で読む。現代の“自己責任”を「つながりを拒否する言葉」と捉え直すところから始まり、『夜間飛行』の支配人リビエールの狂気じみた責任感、妻コンスエロがモデルとされる『星の王子さま』のバラ、自由になった奴隷バークが求めた「つながり」、そして『人間の土地』で黙々と土を耕す農民と、街灯を点す男まで。サン=テグジュペリの言う「愛」と「責任」は、同じことを違う言葉で語っていたのかもしれない。

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3人の見方

乘冨賢蔵サン=テグジュペリが書いているのは「愛と責任」だと読む。現代の“自己責任”を「私とあなたは関係ない」という“つながりを拒否する言葉”と捉え、その対極に、他者や世界とつながることで湧いてくる温かい責任=応答可能性を置く。手間と時間をかけたからこそバラが特別になる——合理的にはサンクコストなのに、それが愛になる“転倒”に感動する。ライスワークだけでは幸せになれず、働くことを生きることとつなげたくなる自分の感覚の原点も、ここにあると語る。
田中諒命がけで手紙を運んだ夜間飛行士たちの「届ける責任」に心を動かされる。周りに非難されても夜間飛行を止めない支配人リビエールの“狂信的なこだわり”こそが世界を動かしてきた、と見る。信念を形にして示したやなせたかしと対比し、答えを固定せず「あとは君が考える」と受け手に委ねる文学の力を評価。人間や正義を問い続けるフランスと、黙々と仕事をこなす姿勢を美徳とする日本の違いにも目を向ける。
高田健太新潮文庫の堀口訳で心が折れかけ、古典新訳で読み通した“翻訳で手触りが変わる”体験から入る。リビアの遊牧民へのまなざしにレヴィ=ストロースの視点を、農民や街灯点しの姿にアドラーの「共同体への貢献」と、ノブレス・オブリージュに近い“自分で選んで引き受ける役割と責任”を見る。現代でフロンティアに挑む人として、ピーター・ティールら宇宙開発に挑む起業家を挙げた。

番組での発言

「自己責任っていう言葉は逆なんだと思っていて、あれはね、繋がりを拒否する言葉なんだと思っていて……この繋がり拒否なんだと思うんですよ。」

— 乘冨賢蔵

「やなせたかしは自分の中の信念っていうのがもう形になってあったんだろうなと思うんですよ。で、サンテグジュペリはそれをあえて固定化せずに、いろんな人をいろんな角度、いろんな視点から切り取って、あとはもう君が考えるんだよっていう作品が多いかなと」

— 田中諒

「ちょっとアドラーっぽいなと思って聞いてました。……結局何のために生きるかみたいな時に、共同体への貢献が1番やっぱりこう……生きがいになりうるし。」

— 高田健太

「ただでさえ彼女はすでにポーっとなっていた。っていう1節があるんですよ。……ポーっとなっていたってなりません。」

— 高田健太(迷言)

「やっぱり愛と責任は表裏なんだろうなっていう風に僕はこれを今回ちょっと思っていて」

— 乘冨賢蔵

このテーマで紹介された本

かもしれない

“自己責任”が「つながりを拒否する言葉」なら、サン=テグジュペリの責任は、つながりから湧いてくる応答だ。手間をかけたからこそ特別になるバラ、自由になって最初に人とのつながりを求めた奴隷、黙々と土を耕す農民——愛と責任は表裏一体で、働くことを生きることへつなぎ直す手がかりなのかもしれない。

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